既契約者フォローは確かに、新規先開拓に比べると重要度が低い活動のように感じられるかも知れません。しかしその一方で、既契約者は《どう》感じているのでしょうか。実は、そこにかなり奥深い問題とチャンスの芽の両方が潜んでいそうなのです。具体的には…。

1.売ってしまった客に対応する余裕は持てない

たとえば住宅でも車でも、顧客が新たに大口の買い物をしたとします。その時《買い手》として、その商品に詳しくなるのは買う前でしょうか、それとも買った後でしょうか。
もちろん答は、買ってから家に住み、買った車を運転した後でしょう。その時顧客は、購入商品を深く体験し始めるからです。しかし契約とその後の手続き以降、《売り手の担当者》は買い手とほとんど交流しなくなるのが普通です。そんなことをしていたら《今月のノルマ》を達成できなくなると考えるからでしょう。
その一方で、《買い手》は《販売担当者》に独特の感情を抱くことが少なくないのです。

2.契約前より契約後に出て来やすい多様な疑問

ちょっと分からないこと、あるいは小さな疑問が出ると、《買い手》は『あ、そうそう』と思い出して、販売担当者に電話やメールをすることがあります。それは、住んだからこそ、あるいは運転したからこそ感じる《疑問》なのですが、それに対して冷たさを感じさせてしまう販売担当者は少なくありません。
ところがその時《買い手》はどう感じるでしょうか。その立場で考えてみてください。それは決して『釣った魚には餌をやらないのか』という程度には留まらないはずです。端的に言うなら『なんだ、この営業者、調子のいいことを言っていたけれど、自社商品をよく知らないようだ』という思いではないでしょうか。

3.顧客が販売担当者に失望する時の最大の要因

釣った魚より、これから釣る魚の方に気を奪われるのは、自然なことです。《買い手》にとっても、それは常識でしょう。しかし、『簡単な質問に的確に即答できない』と《買い手》が感じ取ってしまうと、そこに『この商品を買って、本当に良かったのだろうか』という小さな悔恨や、『これから誰に相談すれば良いのか』という不安が込み上げてしまいます。
住宅や車なら、点検や修繕修理の担当がいますので、悔恨はともかく、不安はかなり軽減されるでしょう。では、生命保険には点検や修理担当が存在するのでしょうか。

4.相談を誘っても言葉だけでは反響は乏しい!

もちろん生命保険には、住宅や車のような『修繕修理は必要ない』と言えます。しかし、それ故にかえって、《顧客が契約後に抱く疑問》の相談先がないようにも見えやすいのです。しかも、生命保険には《定期点検》も《車検》もありません。損保のような契約更新もありませんので、既契約者は、ほぼ、保険営業者の皆様との接点を持っていないことにもなりかねないのです。
『いや、メール等を定期的に発信して、何でも相談してくださいと伝えている』と言われるかも知れません。しかし、既契約者はそのメール等に《親しみ》を感じるでしょうか。

5.1つでも体験談例示があると内容が輝き出す

逆に、『今日でご契約後○年が経過します。この時期になると、○○○○のようなご質問を、お客様から頂戴することが増えて来ます。○○様は、いかがでしょうか。念のため、よくあるご質問とその回答例を、以下に記載しておきます。もちろん、これ以外のご質問等がございましたら、いつでもご一報ください』というコメントならどうでしょう。
少なくとも既契約者は、『定型文かも知れないが、それでも顧客の事情をよく知る営業者だ。この人で良かった』と感じないでしょうか。

6.顧客が対面営業に興味を示さなくなった背景

既契約者に《そう》感じてもらっても、あまり実利はなさそうです。しかし、その姿勢は実は、見込み先に対しても出ているのです。今住宅や車に限らず、対面営業の世界では、紋切り型の営業をする、こう言ってよければ《素人感満載の営業者》が増えています。
既存客への関心が薄く、接触も少ないためか、買い手サイドの実感を捉え切れないままトークに迫力と深みを感じさせられないため、顧客は《売り手》に素人感を抱くのでしょう。そのため顧客も、検討するかどうか『どっちでもいいや』という感覚に陥りやすいのではないでしょうか。

7.プロ性を強く感じさせる人が持つ共通の特徴

既契約者には、既契約者にしか抱けない感覚や思いがあります。そして、それを知っていると、新規先への話し方自体が大きく変わるのです。素人が増えるシステム化社会の中では、その存在はキラリと光るでしょう。光る人は、やはりそれなりの努力、つまり《既契約者から学ぶ》という姿勢があると言えるのです。
ただ既契約者との接触は、それほど簡単ではありません。その接触を《実り》あるものにしようとするとなおさらです。
そのため今、既契約者フォローの意味と価値を具体的に見直す必要が強くなって来ていると言えるのです。

8.AI化の方向の中でも重要視される既契約者

生命保険営業にも、AI化の波が押し寄せようとしています。もちろん、数年でうまく行くような気配はなさそうです。しかし、要注意なのはシステム設計者ではなく、凄腕のデータサイエンティスト、つまり現状データやAIがはじき出す結果を分析する人達です。
凄腕なら、既契約者へのインタビューとその結果分析の重要性を知らないはずはありません。その結果、売りっぱなしの営業担当者の弱点をシステム的に把握し、『人よりAI』と言い出かも知れないのです。
既契約者の思いや疑問は、今、それほどまでに《営業ノウハウの》重要なキーを握っていると言えるわけです。AIを作る必要はなくても、そのキーを十分に有効活用すべきでしょう。

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