データから事例に繋いで保険に至る道筋の例

(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)

2019年に新たに《がん宣告》を受けた人は、男性で56.6万人、女性で43.3万人、合計99.9万人でした。1979年の《がん宣告》患者合計は24.0万人でしたので、新規患者数は30年間で4倍以上に跳ね上がったことになります。このデータを、どう受けとめるべきなのでしょうか。

1.高齢者が増えたからがん患者も増えた?

ご存じの通り、がんの罹病は50歳代あたりから急増するため、昨今のように高齢者の比率が増える中では、がん患者総数の急増は《当たり前》ではないかという見解もあります。しかし、視点を変えると別の課題が浮き彫りになって来るのです。
試しに、高齢者比率増の影響を排除するために、各年代層で人口10万人中の《がん患者数(その年に新たにがんと診断された人)》を計算してみましょう。その結果は、以下のグラフの通りになります。

2.高齢者層の《がん罹病割合》は増大傾向

上記グラフを見ると、たとえば60歳代でがんを罹病する人は、1979年には10万人あたりで0.78千人だったのが、2019年には1.29千人に増えていることが分かります。同様に、70歳代では1.3千人から2.1千人へ、80歳以上では1.4千人から2.5千人へ、かなり大きく増加しているのです。
つまり、高齢者が増えたからがん患者総数が増えたばかりではなく、高齢者数が増えていなくても《がん罹病確率》が高くなっているというのが《現実》なのです。

3.食生活等の《欧米化》が当たり前の今日

なぜ、がん罹病割合は高くなっているのでしょうか。これに対しても、『検査技術が高度化したから、見つけやすくなっただけだ』という指摘も出ています。しかし、国立がん研究センターでは、やはり『生活習慣の変化』への注目姿勢を変えてはいないようです。
まず、その生活習慣の中で、《喫煙》はここ10年で海外からの旅行者が驚くほど、日本の喫煙者は減っていると言われます。しかし《食生活の欧米化》は、世界的な潮流とは逆行するかのように、増え続けている恐れが強いのです。
ある老人介護施設では、高齢者の体力強化のためのタンパク源として肉食を薦めているのだそうです。

4.比較的若い層の生活習慣は改善したのか

更に、悪い生活習慣の1つとされる運動不足は、働き方改革による《時短》で解消されたのでしょうか。それとも未改善なのでしょうか。スポーツ庁の2021年度調査によれば、30歳以上で60歳未満の男女の81%以上が、アンケートに《運動不足を感じる》と答えているそうです。同調査で、70歳代の《運動不足》が69%だったのとは、やや対照的です。高齢者支援等で《運動》が取り入れられているからでしょうか。
いずれにしても、比較的若い層でも、食生活と運動という《身体の調子を整える2大要素》が芳しくないとしたら、今後も高齢化後の《がん罹病割合》は、更に増大する恐れが強いかも知れません。重い病気(災難)は忘れた頃にやって来るとも言えるからです。

5.正確な計算がなくてもイメージはできる

ところが、その一方で《がんによる死亡者割合》は低減傾向にあるようです。がん患者の生存率の正確な計算には、色々と複雑な部分がありますが、下のような《年次別の新規患者数と死亡者数》を比較すると、アバウトではあっても《がんの死亡率は低下して来ている》ことは明らかだからです。

6.がん宣告が余命宣告とは限らなくなった

もちろん、そこには検査技術向上による《早期発見》の効用もあるでしょうが、『がんは治り得る病気になりつつある』とも言えるはずです。つまり、がん対策としての《治療費用》と《治療期間の生活保障》の重要性が、非常に大きくなっているということでしょう。
がん保険による準備や、生命保険を活用した蓄財(解約返戻金)の動機が、ここに見出せます。特に生命保険では、他の蓄財法との比較が問題になるでしょうが、《死亡するリスクも軽視できない》ことをも踏まえるなら、生命保険の死亡保障が、決して不要とは言えないはずなのです。

7.65歳でがん宣告を受けたAさんのケース

企業を65歳で退職したばかりのAさんは、健康診断で《がん》が見つかり、その後入退院を繰り返すことになりましたが、がん保険の一時金で、やや心を落ち着かせて治療に取り組めたと言います。しかしその後、別の病気を併発して、あっと言う間に他界されてしまいました。
まだ若い夫人は、遺族年金の少なさに驚いたようですが、老後のために契約を続けていた終身保険の死亡保障で、その後の生活の目途がついたと言われます。更に高齢に達したら、自宅を売って介護施設に入居することを考えておられます。

8.家族の《それぞれ》に必要なことを語る

営業トークの事例にするには、やや《胸が痛む》ケースが多いのですが、最近のデータを一緒に捉えながら、1つか2つの事例を語るというスタイルの確立で、30歳代や40歳代の年齢層にも、《備えのためのがん保険や生命保険》を提案できるかも知れません。
そして、それは《がん》を治そうとする当人にも、残される配偶者にも《必要》なことなのです。しかも、どんな手段が《得か》を考えるファイナンスの問題ではなく、純粋に《がんの危険》と向き合う話ができるなら、保険を敢えて否定する雰囲気にはなりにくいでしょう。

9.それもまた事例トークのスタイルの1つ

以上のように、データで《問題点を掘り下げ》ながら、1つ2つの事例を語って、保険ユーザーに《自分はどうするか》を考えてもらう、そういうスタイルは、もはや売り込みや提案の域を超えて、セミナー講師的なアプローチにさえなっているかも知れません。
聞き手が一人だけでも、データから事例につなぎながら保険の話に至る話法が、保険の売り手にも買い手にも意味のある《セミナー》に匹敵するものになり得るということです。

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