(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)
既契約者フォローが重要だと言われ始めてから、かなりの時が経過しました。また見込先でありながら、コロナ禍の影響で、その後のコミュニケーションが途絶えてしまったところも少なくないと思います。
その意味では、やや不発に終わった感も残りそうな《既契約者や既存の見込先フォロー》活動について、今、改めて掘り下げてみるべき時でしょう。
1.国のトップでさえも相手にされないことがある
外交に熱心だった安倍前首相が、ドイツの前首相であるメルケル氏と会談の機会を持った時、『ドイツがなぜ日本との外交に積極的ではなくなったのか』という類の話題が出たことがあるのだそうです。
その時、メルケル氏は『だって、日本の首相は頻繁に交代して、誰と話せばよいか分からなかったでしょう』と答えたという“情報”があります。
これが本当かどうか分かりませんし、そもそもそれより以前に、ドイツが日本との外交に熱心だったかどうかも不明ですが、ここには《既契約者フォローが難しくなった要因の1つ》が見て取れるのです。
2.既契約者フォローが難しくなった現在的な事情
もちろん生命保険業界に限ったことではありませんが、既契約者フォローが難しくなった1つの要因には《担当者》が頻繁に変わるという点が挙げられそうだからです。それは、顧客サイドに『長く担当者を継続しない人と関係を持っても意味がない』と感じさせてしまうからかも知れません。
ただし、それだけでもなさそうです。メルケル氏は《首相が短期に変わる》ことを持ち出して、『国民の信頼を得られない素人政治家と話しても時間のムダ』だと言いたかったのかも知れないからです。
3.自分にとっての意味が薄いことに耳は貸さない
一般情報ならインターネットで収集できる現代社会では、営業担当者も、顧客に《素人臭い》という印象を持たれると、『ああ、この人と話してもムダだ』と感じられてしまいやすくなります。
ただ《素人臭さ》とは、《どんな匂い》なのでしょか。そして《プロらしさ》とは、どのような印象なのでしょうか。
ここに、フォローを契約の防衛や新たな追加機会発掘という《成功》に導く最初のキーがありそうなのです。
4.顧客に《プロらしさ》を感じさせるアプローチ
初見で《プロらしさ》を感じさせるためには、それが面談であれ、電話やメール等の通信であれ、《アプローチの目的を顧客に明確に伝える技術やツール》が必須になります。
『お近くに来たので…』というのでは、何をしに来たか分かりませんし、保険の話を詳しく語っても、それでどうしたいのかが分かりません。目的不明は、《素人の名刺》のようなもので、多忙になり過ぎている現代では、無視すべき先に成り下がってしまいやすいのです。
5.アプローチの《目的》をどのように語るのか?
しかし申し上げるまでもなく、目的の明示として『既契約の防衛にやって来ました』とか『新たな保険提案の可能性を探りに来ました』と言うわけではありません。そこに至る《中間目的》を明確にすべきだということなのです。
その中間目的とは、少なくとも『私は、あなたが困らないよう気を配り、あなたが困った時にご支援する存在であり、最近、こんなご相談が増えているので、先回りしてお伝えに来た告知者』だという自己紹介でしょう。
つまり《①私は何者か(気配り者)》と《②あなたと話をする理由(事例)》を、どれだけ短時間で顧客に分からせるかが勝負になるわけです。
6.プロのアプローチでなければ関係は始まらない
気難しい?メルケル氏にも、たとえば『①私はドイツ経済に貢献する案を持っている』と伝え、その案をお話するのは『②貿易の拡大でお互いの経済が活性化した事例があるからだ』と伝えたなら、任期の浅い首相でも、対話の糸口を掴めたかも知れません。
新人でもベテランでも、今そうした《プロのアプローチ》を心掛けなければ、相手にされない状況になって来ているのです。特に、具体的な事例を持たない一般トークでは、インターネット情報を超えることができないからです。
7.アプローチ初期でつまずかないためのワンツー
もちろん、プロとしての信頼を得ても、既契約防衛や新規提案機会獲得に繋がらなければ、営業者の皆様の最終目的は果たせません。
しかし、最終目的を意識し過ぎて、アプローチの入り口でつまずいてしまったら、それこそ皆様の時間と労力をムダ使いしてしまうことになるでしょう。そのため、まずは《①私は顧客にとって何ができる何者か》と《②それを伝える大義になる事例》を持つところから、フォロー活動を改めて考え始める必要があると申し上げたいのです。
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