保険に繋がる話題はむしろ顧客から引き出せる?!

(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)

ある日、ふと入った家具店で、繰り返し家具の売り込みを行う店員の姿勢に《うんざり》したAさん(生命保険営業者)が、その原因を妻と共に考え始めたのだそうです。妻の仕事は介護士で、職場では、こう言ってよければ『厄介な人の担当を任されがち』なのだそうです。さて、そんな2人が見つけた《答》は…?

1.家具店の《営業トーク》を不快に感じた理由は?

Aさん夫婦は、家具店を出た後にホテルのカフェで、なぜ店員に不快感を抱いたかの《話し合い》を始めました。何かにつけて『どうしてなのか』の意見を出し合うのは、結婚以前からの2人の習慣のようなものなのだそうです。
そんな対話の中で、『“何をお探しですか?”と聞かれても、家具に詳しいわけではないから答えようがない。それなのに、しつこく食い下がる』と妻が言います。夫は『“こんな書斎が欲しいなあ”という思いで書棚とデスクを見ていたら、“これはですね”と商品の説明が始まった』と、顔をしかめながら指摘しました。

2.『何をお探しですか?』と聞きたがる姿勢が不快

そんな話題を皮切りに、2人の家具店批判は留まるところがなかったのだそうです。そこでAさんは妻に、『何をお探しですか?』という問い掛けが、どのように不快だったのかを尋ねてみたのだそうです。
妻はしばらく考えて、『それは店員の知りたいことで、しかも私にとっては、“そうか、こんな家具が欲しかったんだ”と気付く時の結論のようなものでしょう。あれこれ見ないうちは、自分の気持ちは分からないもの…』と言うのです。つまり、店員のメリットである“結論”を、最初に聞かれたことが不愉快だったということです。

3.批判はやめて《話が弾む》トークを想定しよう!

では、“どう聞いて欲しかった”のでしょうか。妻は、ちょっとすまして『そうね、素敵な色のスカーフですねとか何とか、ちょっと私のセンスに興味を持って欲しかったかしら』と意外なことを言い出します。
そして、『私が店員なら“きっと、ご自宅のインテリアもオシャレなんでしょうね”と言うわ』と続けます。お客様が乗って来なかったら、ダメ元で『最近流行しているブルックリン・スタイルって、ちょっとお客様にはおお似合いではないですよね。実は私、そのコーナーの担当なんです』と、敢えて言ってみるのだそうです。
それは、お客様のセンスで、ぜひ評価してほしいというスタンスなのだそうです

4.顧客に学ぼうとする姿勢が《共感》を呼びやすい

『でも面倒だから、“私は北欧調の家具が好き”と言ってやる』と、妻は笑い出しました。そして『変よね、作り話で店員をいじるなんて…』と言います。そこで夫は『お客様、北欧家具のコーナーもございます』と、店員に《なりすまして》みました。
『そんなんじゃ、見に行かないわ』という妻に、夫は更に『私、北欧調の家具を勉強中なんです』と言いました。『まあ、ぎりぎり行ってみるかな?』と妻が答えます。
そしてその店員が、自分の話や商品の話をとうとうとするのではなく、『私の北欧家具好きのポイントを聞き出してくれるなら、きっと話が弾む』と言うのです。

5.顧客が、すぐには買わない高額商品だからこそ…

『でも買わないよな』と夫が言うと、『あたりまえじゃない。家具は高いから、慎重に選ばないと』と言いながら、妻は『でも、そんな風に話を聞いてくれたら、買う時にはその店で、その店員を探す』と締めくくりました。
つまり、不快なのは『何を探しているか?』と、いきなり《結論》を聞かれることで、話が弾むのは《自分に興味を持って、話を引き出してくれる》からだと言うわけです。もちろんそれでは、家具や生命保険のような高額商品を即断することにはならないでしょうが、そこに今度は《商品の話》を顧客サイドから出してくる関係が生まれ得ると言うことなのです。

6.売れた客にではなくこれから売る客に関心を示す

『でも、何を探しているかを聞く姿勢の店員は、家具が売れてから顧客の話に興味を持つことが多いわよね。あれ逆なのよ』と妻は、何かを考えているようでした。介護現場でも『どこか痛いですか』等と結論を聞くとうるさがる利用者さんでも、『顔を覗き込んで、何かいいことありました?』等と笑いかけると、『いいことなんかないよ。とにかく腰が痛くて…』と、自分のことを、きちんと話し始めるのだそうです。
そんな利用者サイドの《自己開示》が、介護者と利用者の距離を縮め、介護を進めやすくするのだそうです。

7.顧客に保険に繋がる話題を出させるのが大事!

つまり、売り手が保険の話を出すタイミングが大事なのではなく、顧客に保険に繋がる話題を出させることが重要だと言うわけです。直接的な《保険の話題》でなくとも、《リスクや不安事が絡む具体的な話題》に至るなら、《保険の話》に繋がり得るでしょう。
そして、そんな《時点》へ顧客と一緒に至るための《ストーリー》を持つことが、生命保険離れが進む今日、非常に重要になっていると言えるのです。
もちろん、そのストーリーは売りたい保険商品をスタートに考え始めて、顧客に向ける話題を順番に作り込み、顧客に話をする時は、それを逆順に話すという、やや複雑な技法が必要です。なぜなら、生命保険は家具よりも複雑で、目に見えない商品だからです。

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