《人の特性》を活かした顧客フォローの要点

(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)

保険の既契約者フォローは昔も今も、その重要性が様々なところで《指摘》され、多少の《温度差》を持ちながらも、営々と続けられて来た活動だと言えると思います。ただ、それはネット社会の中で姿を変えるのでしょうか。そして今《既契約者フォロー》では、フォローするサイドに何が求められているのでしょう。

1.積極姿勢がないなら《ネット》社会は沈黙

今やインターネットがあれば《何でも分かる》と言われますが、ネット情報には少なくとも《3つの欠点》あるいは《不得意点》があります。
その第1の欠点は、パソコンやスマホで検索を始めない限りネットは沈黙しているという《①沈黙原則の姿勢》です。パソコンやスマホを使わない人には、現代は情報社会ではありません。むしろ『詳しくはネットで!』と言われて放置される《無情報社会》なのです。

2.情報を得るための検索にも《技能》が必要

ネット情報の第2の欠点は、検索が下手だと欲しい答が得られないという《②検索技能の要求》です。たとえば『インターネットの速度を上げる方法』と検索しても、答は多様と言うよりむしろ雑多で要領を得ません。通信機器の話か、プロバイダー契約の内容か、パソコンの性能か、地域性の問題か、全体の《ネット通信構造》を知っていなければ、なかなかうまく検索ができないのです。
もちろん『私にピッタリの保険は何でしょう?』という《前広がり》過ぎるキーワードにも、ネット情報は答えてくれないでしょう。今のところ、AIも、それらしい一般論を返しているだけのようです。

3.ネット上では《いつ》の情報なのか不明瞭

ネット情報の第3の欠点は、時期やタイミングが分かりにくいということ、つまり《③タイミング錯誤》の問題です。たとえば『大谷選手のホームラン』というキーワードで検索しても、それが今日なのか1ヵ月前のことなのかは、内容を確かめなければ判然としないということです。
大谷選手のホームランなら調べようもありますが、様々な主体から発信される『お勧めの生命保険』では、いつ、どの年齢層の、誰に、どのよう意味合いで勧めているのかを判断するのは、骨が折れるケースも少なくないはずなのです。

4.上記①②③の《逆》が人のフォローの強み

なぜネットは《①沈黙原則の姿勢》《②検索技能の要求》をし、更に《③タイミング錯誤》の問題を抱えているのでしょうか。それは申し上げるまでもなく情報が一方通行だからです。
しかし《人》がフォローするなら、面談であれ電話であれ、あるいはチャットやメールでさえも、『もしかしたら、こんなことにお困りなのではないですか』という《①の逆:お節介姿勢》を取ることもできます。
あるいは『私が調べてみます』という《②の逆:検索技能不要》なケースも生まれるでしょう。更には、言葉の現在形や過去形を使いながら、自然な形で《③の逆:時期を教える》ことも普通なのです。
その《逆の①②③》は今のところ、対面式あるいは対談式の《人のフォロー》でしか実現できません。

5.人のフォローでも実現できるとは限らない

もちろん、直接的な個別対話の機会を持ったからと言って、ネットではできないコミュニケーションができるとは限りません。無目的な《雑談》や《挨拶》程度の対話は《情報交流》でさえないからです。
既契約者は《時間の無駄》を感じて不快になるかも知れません。あるいは、そんな不快を予測して、面談や対話を『今、時間がなくて…』と、門前払いしてしまうかも知れないのです。
だからこそ、既契約フォローにも、新規開拓に勝るとも劣らない《準備》が必要になるのです。

6.既契約フォローで求められる《準備》は?

既契約フォローは、特に顧客にとって《目的が不明瞭》なものだと捉えるべきでしょう。アプローチの意図を読みかねるということです。そのため、それ相応の目的をアプローチ側で用意しなければならないのです。しかも、その目的は《文書化》されていることが望ましいでしょう。《その場限りの思い付き》ではないことの証になるからです。
ただ、その《文書》に従って説明を始めるだけではなく、むしろ『顧客に話をさせる』ことが肝要です。顧客の話が、たとえそれがクレームであっても、自分の思いを吐露するだけで顧客には何らかの満足感が生まれ得ますし、話しているうちに《自己矛盾》に気付く顧客も少なくないからです。
一方的に話したのでは、そんなチャンスは生まれません。

7.顧客の話に対する回答は後日の方がベター

《顧客が話をしやすくなる》ためには、フォロー者がいちいち反応や説明を加えないことが大事になります。その場で反論や答を出すと、面倒になって顧客は沈黙する傾向があるからです。皆様もそうでしょうが、私たちは面と向かって説得されるのを好まないようなのです。
それは、《自分の間違いや勘違いを認めさせられる》ような気分になるからでしょう。しかし、一旦『持ち帰って調べておきます』とフォロー者が引き下がれば、『担当者が即答できない話を出した』ことに、顧客は、少しだとしても満足する傾向があるのです。
しかも持ち帰ることで、次回のアポが取りやすくなり、新たな提案等の準備もできます。

8.公開用チェック・リストと2つの付随文書

その一方で、『今忙しい』と断られても、置いて帰ったり、(電話フォローなら)メールや郵送で送ったりできる《文書》が存在していると《次》に繋げやすくなります。ただ、その《文書》は『こんなことのご確認のために伺いました』と主張する《公開チェック・リスト》のようなものが効果的でしょう。《趣旨説明文》的な文書は読まれないケースの方が多いからです。
そんな《公開用チェック・リスト》が準備できたら、更に『ご契約から年月が経過していますから…』という視点から記す注意事項や、特に《他種目販売》や《契約内容再考》の話題に入れるような《ひとくち講座》を《文書ツール》に加えると、なおさらアプローチ効果を出しやすくなるでしょう。

9.フォローに欠かせないツール武装と諸準備

多くの人が『私は多忙だ』と感じている現代では、《ご挨拶》のような無目的なアプローチは敬遠されると覚悟しておくべきでしょう。無目的だと顧客に感じさせるアプローチで、たとえ話が弾んでも、たぶん、その内容は保険には無関係な世間話で、今度はフォロー者サイドに《時間がもったいない感》が生まれないとも限りません。そんなことにならないよう、既契約者フォローには、それ相応の《ツール武装》が必要ですし、可能なら《契約内容の見直し》《他種目販売》《紹介あるいはアプローチ可能先の情報交換》を狙える準備が欠かせないと言えるのです。

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