(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)
生命保険は、核家族化を通り過ぎた《未婚者の増加》や《長寿化》で、時の流れに合わなくなったと言われることがあります。もしそうだとしたら、時の流れの中に、生命保険への《感覚》を引き戻すことが肝要になるはずです。
1.確率的な計算上で過小評価されがちな生命保険
長寿化を前提にした時、老後資金を貯めるなら、死亡保障がある生命保険よりも、投資信託や貯蓄の方が有利だという考え方があります。同時に、妻が働くのが普通になりつつある今日では、夫が妻に死亡保障をする意味が失われつつあるとも言えそうです。
企業経営者の相続対策にも、たとえば《事業承継税制》のように、自社株への課税軽減措置が出て来る中で、相続税対策の意味合いも変化し始めました。
一般家庭でも、たとえば親の家を相続するために相続資金を用意する必要性が、以前ほどには強くなくなりました。子供は、その家に住まないケースの方が多いからです。
2.生命保険が時代に合わないという誤解の解消!
しかし、本当に《そう》なのでしょうか。それは、かつて《生命保険トーク》が圧勝していたように、反生命保険の営業トークのなせる業であるだけなのかも知れません。その最たるものが『将来(老後)資金を準備するなら、死亡保障がある生命保険は不利だ』とする指摘です。
結論から言うなら、死亡保険金も、その受取人の将来資金であり老後資金です。ただ、被保険者の将来資金にならないというだけで、それは、いわば《不当な非難》なのです。
3.死亡保険金という将来資金を意識しなおすなら
しかも、被保険者の将来資金に限れば、生命保険に効果がないと言うなら、保険料積み立て型の生命保険を契約すればよいでしょう。その際『いや、生命保険は運用効率が悪い』とされるなら、『長寿化では、誰も死なないのか』と問うべきです。
そして死亡保障が必要だと感じるなら、常々申し上げている通り、定期保険と貯蓄を併用するより、たとえば終身保険一本に絞った方が、費用対効果が大きいケースが少なくないのです。
4.時の流れが生命保険の種目選択に影響するだけ
逆に、終身保険のような貯蓄型の生命保険を前提にする限り、夫婦が互いに互いの被保険者になる形の契約の可能性が生まれます。妻に収入があろうがなかろうが、配偶者の死は、心ばかりではなく経済力をも害する恐れが強いからです。妻に先立たれた夫の生活をイメージするだけで、それは明らかでしょう。
夫婦が揃って老後を迎えるなら、揃って解約返戻金を老後資金に使うことができます。熟年離婚を《画策》する時も、私のための私の解約返戻金ですから、問題はないでしょう。
5.お互いがお互いを保障する関係がもたらす果実
その上、お互いがお互いの死亡保障をするという《関係》の中では、それぞれが自分のために貯蓄する時よりも、《より多くの資金》を積み立てに回すことが可能なのではないでしょうか。FP的な計算では、保険料と貯蓄に回す資金を《同額》で比較計算しますが、現実には、それは必ずしも《同額》にはならないということです。
しかも、死亡保障がなくなることを思えば、簡単に保険を解約することもできません。もちろん、受取金の変動リスクも、生命保険はそれほど大きくありません。
6.相続税納税資金準備も単純な計算では語れない
相続も同様に、『住まない家は相続時に売ればよい』というのは《机上の話》です。両親が同時に他界するのでない限り家は売れません。一次相続税が発生するケースもあるでしょう。両親が同時に他界した時でも、家を売るのは決して容易なことではありません。特に《買い手》に、足元を見られた時には、好ましい価格での販売は不可能です。
先の《事業承継税制の活用》でも、自社株にかかる相続税の納税が猶予される後継者には、その猶予条件がなくなるというリスクが発生します。準備が不要になるわけではないのです。
7.顧客教育=具体的な事例で現実的に考えさせる
辞書的な言葉や単純な算数だけで生命保険の効用を捉えるなら、負の評価はし放題かも知れません。しかし現実をイメージする、つまり《具体的な事例で先行きを捉える》なら、事態はそう簡単ではなくなるのです。
自分の老後にも家族の死にも、定年退職にも第二の人生にも、相続や財産の維持保全にも、常に《資金》が必要なのです。
そんな現実的な発想の中で、効果的な《資金作り》をイメージし直すなら、強引なトークに走らなくても、顧客にとって《生命保険が重要な選択肢の一つ》になることは明らかでしょう。
そして、そんな《現実発想=具体的な事例を通じて考える》ことを勧めるのが、顧客教育型のアプローチなのです。その教育手段は、学校でも塾でもなく、《根気よく情報を発信する》ことで効果を発揮します。メルマガやブログ、あるいはDM手紙やセミナー等、ご自身に合った継続可能なスタイルで、トライして頂きたいと思います。
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