もっと《状況や事例》に語らせよう
生命保険や医療保険の必要性や有用性を《十分な根拠》を持って語っても、顧客や見込み先に《軽くいなされる》ことは、決して少なくありません。その理由は、適切な忠告が軽視されがちなのと同じで、そこに《二大門番》の邪魔が入るからです。そして、その《邪魔排除の切り札》は《状況や事例に語らせる》ことなのです。
(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)
1.なぜ適切な忠告が聞かれないのか?
たとえば私達が、『外出時には、雨に備えて折り畳み傘を持って行け』と忠告されたとします。その時、カバンが小さかったり、手ぶらで外出したかったりする時には『何で?』と反論したくなるでしょう。
『天気予報で雨が降ると言っていたよ』と忠告を重ねられても、今度は外を見て『誰も傘なんか持っていないじゃないか』と反論してしまいます。
2.一般的な忠告等はスルーされやすい
《忠告》は、ほとんどいつも《聞き手の都合》と《周囲の様子》という二大門番に《はじき返される》傾向があるのです。そして『将来に備えましょう』という提案も、原則的には、そんな《二大門番》を相手にする忠告の1つなのです。
『生命保険を検討しませんか?』と問い掛けても、『そんな金ないよ』という都合番と、『周囲に保険に入っている人はいないみたいだよ』という周囲番に、容易に押し返されるということです。
3.結構知的な《都合番》と《周囲番》
しかも《都合番》と《周囲番》は、結構知的です。『長生きの時代に生命保険は無駄になる』と都合番が言うと、『だから今、保険より投資だって皆言っているんだろうね』と周囲番が付け加えるという《連係プレー》もこなします。
では、この二大門番にどう対処できるのでしょうか。説得しようとすると、それこそ《回りくどい》話になりそうです。そこで、門番を相手にせずに《素通り》を試みます。
4.聞き手が自分の状況の再考を開始!
たとえば『あなた今日は、あの(山の)公園に行くんでしょ。この前Aさんが、家を出る時は晴天だったのに、突然夕立に降られたって言っていたよ。あの地域の天気は変わりやすいって…』と言ってみるのです。
聞き手は、公園近くにビニール傘が買えるコンビニがないことを思い出します。そして、結局は、折り畳み傘をカバンに忍ばせるかも知れません。そうでなくとも《傘を持って行こうかどうかを意識的に考える》可能性が高くなるのです。
5.顧客側の二大門番が苦手とすること
保険の顧客の《二大門番》は、一般論には反論が得意ですが、《他者事例》には案外防御姿勢をとらないのです。その理由は、《雨には傘》という一般論には、自分の都合をあれこれと主張できる反面、《他者事例》は、一応でも考えてみなければ、反論すべきかどうか、反論するとしても《どのような反論》が効果的かは読み切れないからでしょう。
『生命保険はこんな風に役立ちます』という一般論より、具体的な《Bさんの事例》の話の方が関門を突破しやすいということです。
6.有効な事例に求められる要素とは?
ただしその《突破事例》は、『今、低解約返戻金型終身保険が人気です』とか、『40歳代の皆様は、お子様が社会人になるまでの定期保険をよく契約なさいます』という《データ的な話》ではパワー不足でしょう。
それらは、一般論つまり《量的傾向》の域を出ないからです。都合番が『いや、私はその他大勢とは違うから』と、強烈なシャッターを下ろします。これには周囲番も、驚くことに反論しません。ここでも都合番と周囲番は《知的》なのです。
7.事例が二大門番をかいくぐれる理由
では、《二大門番》をかいくぐりやすい生命保険や医療保険の《事例》とは、どのようなものなのでしょうか。
それは一口に捉えるなら、匿名のAさんが《保険の必要性や有益性》に気付く過程を、可能な限り具体的に記した《例話》です。それはたとえば、『あの山の公園に行くなら、天気が変わりやすいから傘が必要』という《具体性のある話》なのです。
8.聞き手が効用を改めて見直し始める
そのため、そこで特定された《具体的状況》を自分事とは思えない人も出て来ます。『いや、今日は街中のショッピングだから傘はいらない』と言われるような時です。
そんな時は『あっそうだ、Bさんが都市部では晴れたら日傘、降ったら雨傘になる折り畳み傘がいいって言っていた。ショッピングモールで探してみれば…』と、別の例を出します。聞き手は《傘の効用》を、改めて見直し始めるかも知れません。
9.事例が発揮し得る《2つのパワー》
しかも具体的な事例は《第三者からの伝言》のようなものです。自分の体験や考えなら、1つか2つしか紹介できなくても、伝言なら《多様なストーリー》が可能になるのです。
単に他者から聞いた話や、事例集等から得た例に留まらず、それを《自分流》に、あるいは《自分の顧客層》により分かりやすくするために《編集》しても良いはずです。なぜなら《誰が言ったか》よりも、《その内容が役に立つかどうか》の方が大事だからです。
その意味では、顧客の《二大門番の傍らをすり抜ける》だけでなく、誰(営業者)の意見かどうかで即断せず、《内容が役立つかどうかを考えさせる》のが、事例が持つ《パワー》だとも言えるのです。

