(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)
私たちは《興味》が持てないことの詳細を《説明》されても、理解するどころか、反感さえ抱くことがあります。これは普段なら《当たり前》のことではあるのですが、特に一所懸命になった時には《ふと忘れてしまう》ことでもあるようです。その《ふとしたこと》が、案外営業成果を左右しているかも知れません。
1.生命保険や医療保険への一般的な興味
さて、いきなりですが、生命保険や医療保険に対する興味とは、いったいどのようなものなのでしょうか。顧客層の関心を引くのは、保険の種類や内容でしょうか。それとも、保険料や保険金あるいは解約返戻金の額でしょうか。
既に保険への興味を抱いている人には、その全てが《興味》の対象でしょうが、そうでなければ、保険の話をされても、そもそも《どこ》に《どう》興味を持てばよいのかさえも、実際には分かりにくいのが普通でしょう。
2.保険料のお得感が訴求できる時には…
たとえば保険の料率が変わる時期なら、『今年の3月末までのご契約なら、値上がり前の保険料で契約ができます』という訴求が成り立ちます。『遠くても10円でも安いスーパーに卵を買いに行く』という節約感覚に訴えることができるからです。
しかし卵は、特にアレルギーでもない限り、生活必需品の1つです。その一方で、保険が生活必需品かどうかは、契約者の価値観次第でしょう。つまり、保険料率変更に《興味》を抱く人は、既に《保険の必要性》を感じている人であり、そうでないなら全く興味をそそらない懸念さえあるということです。
3.一般の興味を引く《あるもの》と合体
では、生命保険や医療保険に《興味》を抱かせる話はできないのでしょうか。保険の営業では、買い手が興味を抱かないまま、根気良く《説得》を重ねる以外に方法はないのでしょうか。
もちろん、そんなことはないでしょう。生命保険や医療保険は、私たちが特に興味を抱きやすい《あるもの》に直結しているケースが多いからです。その《あるもの》とは、結論を急ぐなら《事件》です。
4.一般の興味を引く《あるもの》の正体
マスメディアやインターネットでは、今もなお、様々な事件や事故が報道されています。火災の話や車の事故あるいは犯罪等は、遠い地域や海外での出来事まで、写真入りで報道されます。それを私たちは少なからず関心を持って見ているのではないでしょうか。たとえ遠くの出来事でも、いつ《自分》にふりかかるか分からないからです。つまり他人事ではないのです。
ただ、『生命保険や医療保険への関心につながるような事件は少ない』と感じるかも知れません。しかし、それは《万人に興味を抱かせる》ことを狙ってしまうからかも知れないのです。
5.たとえば登山愛好家のケースを考える
たとえば、山登りが好きな人に対象を絞ったとします。その人には《山での遭難事故》は無視できない話でしょう。そんな中で、遭難時の捜索費用が遭難者やその家族の自己負担になるような時、不幸にして遭難死してしまった時、残された子供たちの就学に困難が生じた時、そんな時を《想定》することはできるはずなのです。
否、むしろ登山をこよなく愛する人は、結婚し家族を持っているなら《遭難想定》をすべきはずです。その人は、家族を養っているからではなく、むしろ《家族の支え》の中で自分の趣味を満喫していると言えるずだからです。
6.一つの《事件》として事態を捉えると
そして《遭難》という事件が起きた時、生命保険契約があるかないかで《どう》違うかを指摘されれば、少なくとも《保険の話を聞いておく》必然は生まれるでしょう。登山愛好家本人に、そんな意志や気持ちがない時でも、家族にとっては捨て置けない話になり得ます。
その後は、まさに生命保険の機能や種類、費用や契約方法の説明になるでしょうが、顧客層が興味を抱くなら、その時の保険の話には《聞き手も熱》が入るはずなのです。
7.一般家庭に生じるありきたりの出来事
やや失礼な言い方にはなりますがで、特に趣味がない普通の家族でも、夫がローンを組んでマイホームを購入しているような時、そのローン返済額は当然家計から捻出されます。そのローン返済のために妻がパート収入を得ているような時、どうなるでしょうか。
Aさん夫妻は、被保険者である夫が急死しても、団信保険で《その後》のローン返済はなくなりました。しかし、被保険者の夫ではなく、妻が他界したBさん夫婦では、夫は妻の死によって途端にローン返済に困るかも知れないのです。妻の死によって、生活費の負担も増大する傾向を否めません。
8.ありきたりの出来事を事件化する意味
それは、以上のような形に解説すれば、ありきたりの話です。しかし、『あるところにBさん夫妻がいました。とても仲の良い夫婦で、子供は2人、2人ともまだ小学生でした。ところが…』という《事件ストーリー》にまとめると、関心を持たざるを得ないケースが増えて行きます。
少なくとも、ニュースで様々な事故や事件を見聞する人なら、少しでも興味を持たない方が不自然でしょう。しかも、事件は、良きにつけ悪しきにつけ、私たちの興味を吸引するだけではなく、『何が起きたのか』『その原因は何なのか』『自分に起きた時は、どう対処できるのか』等と、《その後》のストーリーが広がり得るものでもあるのです。
9.生まれたストーリーを保険に繋ぐ技術
そんな形で生まれた《ストーリー》を生命保険や医療保険に繋ぐ技術を身に付ければ、《事件》で興味を引いて、徐々に《保険提案》に繋いで行くことが容易になるはずです。しかも、《売りたい保険》から始めて、そこへ導く《事件》へと《話を逆順に考え》ると、それだけでも、そのストーリーは更に作りやすくなるのです。
技術習得には、確かに練習が必要ですが、練習は、それほど難しいものでも高度なものでもありません。コツコツと積み上げて行けば、徐々に、時には急速に進歩するもののようなのです。
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