保険の話を聞かない人が増えたとしたら、それは保険への興味が失せたのではなく、保険がどのように自分の人生の役に立つのかがイメージできなくなったからかも知れません。
そして、そんなイメージが難しくなった背景には、現代人の《価値観の変化》が大いに影響しているようなのです。そのため、顧客アプローチにも《変化》が求められるのですが、その内容は…。

1.退職後に郊外に引っ越したAさんの実体験

退職後、郊外に引っ越したビジネスマン(Aさん)の話です。天気の良い日に車を洗っていたら、近隣の工事現場のガードマンから『車がお好きなんですね』と声を掛けられたのだそうです。Aさんは『いやあ、あまり乗らないから罪滅ぼしに洗っている。それに電気自動車を買うまでのつなぎ扱いだし(別に、この車が好きなわけではない)』と、冗談半分に答えました。
するとガードマンは『あまり乗らないなら、電気自動車はやめた方がいい。長距離を乗る人じゃないと(燃費では)元が取れない』と、立て板に水で語ったそうなのです。

2.《元を取る》とは、どういうことなのか?

Aさんは『何で、元を取る必要があるのか?』と言い掛けてやめました。自分とは価値観が違っていても、ガードマンの言い分に《間違い》はないからです。
しかし、その夜『味気ない数値の比較だけで、実も質も気に留めない話が多い』と、夫人と語り合ったのだそうです。夫人も『元を取るために車を買うんじゃないわよね。電気自動車って、ちょっと乗ってみたいし、考えるだけでウキウキする』と、二人で大笑いしたのだそうです。そしてAさんは『あと何年運転できるか分からないけれど、次に買うのは、お前がウキウキするカッコいい車にしよう』と、夫人に改めて約束しました。

3.抽象的な金額で具体的な内実は測れない!

特に投資や保険等、《金額》をテーマにするビジネス分野では、当然、投入とリターンが問題になります。つまり、1千万円の投資額や保険料に対して、どの程度の利得やメリットが得られるかが重要ですし、それはファイナンス感覚上、正当なことでしょう。
しかし昨今、Aさんのように、価値は《数値》では表せないという感覚を持つ人が増えているのも事実でしょう。たとえば、平均余命までの期間が長くはないから新しい家を買うのは《もったいない》という発想ではなく、余命が短そうだからこそ、昔から住んでみたかった家を買いたいと考える人も増えているということです。

4.金額の提示に興味を示す人が減少し始めた

そんな《楽しみの実感や質》のようなものを大事にする人に、たとえば『老後のゆとり生活のためには、○○万円の資金準備が必要だ』と言っても、琴線には触れない恐れがあるのです。『死亡保障や入院保障には○○万円の金額が必要だ』という言い方でも同じです。
その人は、誰にも当てはまる抽象的な金額ではなく、自分自身が選び取る《具体的なモノや暮らし方》でなければイメージが湧かないということです。
しかも、そんな人は、子供や親戚、かつての部下や近隣の若者に、どんな話をしているでしょうか。

5.お金よりも大事なものを語るわけではない

その話は、確かに『お金よりも大事なものがある』という一般的なものではないかも知れません。しかし、たぶん『したいことがあるなら、お金が必要だけど、したいことも探さずにお金だけを貯めるなんて寂しいね』という類の話をしているのではないかと思うのです。
そして、それを聞いた若者層や壮年層は、確信を持って『お金の話ばかりしないでよ』という姿勢を、ファイナンス担当者に示すのではないでしょうか。あるいは『投資や保険関係の人の話は、お金ばかりで、それ以上のイメージがないため興味が持てない』と言いながら、聞く耳を閉ざしているかも知れません。

6.Aさん夫人のワクワク感を掻き立てたもの

先のAさん夫人が電気自動車にワクワクしたのは、電気自動車の運転が、どんなに楽で楽しいかを、知人から聞かされたからでした。運転もさせてもらっています。だから、高額車の購入に抵抗がないのです。
もちろん生命保険や医療保険で、ワクワク感は作り出せないでしょうが、そのワクワクを《安心》に置き換えるなら、保険にもチャンスがありそうなのです。
しかも、保険には《保険金を手にした後の安心》《保険契約をしているという保険金以前の安心感》の2種類の安心機能があり得ます。

7.安心をイメージさせる具体的な中身が大事

ただ、それを『安心ですよ』と語るだけなら、無味乾燥な金額と同様、人の琴線には触れにくいでしょう。安心という概念も抽象的で掴みどころがないからです。
しかしそれを、仲睦まじいAさん夫婦が、お互いに生命保険の契約者と被保険者になりながら、『でも長生きしような』と語り合っていた話(事例)なら、少し具体的なイメージが湧いて来るかも知れません。そして、そこで契約された終身保険の解約返戻金があれば、自動車ばかりではなく、快適な家の購入資金にも当てられそうです。その上に古い自宅を売却すれば、かなりの余裕が出るでしょう。
ちなみに、Aさん夫婦は生命保険を解約していません。人生には『まだ先がある』からだそうです。

8.私たちの感覚や価値観は千差万別だから…

もちろん、人の感覚や価値観は千差万別ですから、1つの事例で全てを語ることは不可能でしょう。そしてだからこそ、少しでも多くの《事例》を持つことが肝要なのです。その事例も、得したとか損したとか、そんな話ばかりにこだわらず、安心や信頼、信用や協力の《イメージ》が湧く具体例が良いはずです。
大学3年生の時に、突然父親を失ったBさんは、父親の死亡保険金で、母親に気兼ねなく、大学を卒業することができました。今、母と妻と子供2人の5人家族で暮らしています。
死亡保険金の額も大事ですが、それで家族に気を遣う必要がなかったという《精神状態》が大事なのです。それがなければ、『母親との仲もうまく行かなかっただろう』と、Bさんは当時を振り返ります。

9.心と人間関係が現代人の最大の関心事に!

一見、中途半端にも感じる《心や日常の問題》が、今や既に《現代人の重要な関心事》になりつつあります。仕事で成功しても、何だか空しいと感じている人も少なくないようですし、いわゆる出世よりも家族との時間が大事と言い切る人も、驚くほど増えているからです。
そんな人にも、生命保険でアプローチできるように、『気兼ねなく、自分のしたい体験をすることが、どんなに心を満足させ、その結果近しい人との関係をも良好にするか』の事例を示し、『でも、そのためには、それなりの信頼形成と資金準備が必要なのですよね』というスタンスをとるべき時に、今来ていると言えるかも知れないのです。

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保険を契約する人の《思いや価値観》が伝わるような《具体的な他者事例》の作り方に興味をお持ちの方は、以下の教材の活用をお勧めいたします。
【教材】生命保険営業コンセプトの作り方と参考例