顧客とのコミュニケーション不足の解消法

(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)

『コミュニケーションは重要だと分かっているが、なかなか時間を作れなくて…』という声を聞くことがあります。しかし、《コミュニケーションとは何をどうすることなのか》について明確な認識を持っていないとしたら、逆に、どんなに時間を掛けても、顧客や見込み先とのコミュニケーションは成立しないかも知れません。

1.言葉の意味を改めて考えてみることが重要

コミュニケーションは、《セールストーク》と同じくらいポピュラーな英語ですが、ではその『意味するとことは?』と、改めて考えてみると、意外に難しいかも知れません。
もちろん、言葉の意味が分かったら、言葉通りのことができるとは限りませんが、《コミュニケーション》に関しては、意味を再考しておかなければ、無駄な努力ばかりを続けてしまいそうなのです。
では、コミュニケーションとは《何をどうすること》なのでしょうか。

2.コミュニケーションの意味は《相互理解》

コミュニケーションを和訳すると《意思疎通》だとされることが多いようです。しかし、これでは日本語の方が難解に見えて来ます。そこで、平易な英語で『私たちはコミュニケーションができているかい?』と言ってみることにしましょう。
様々な言い方があるでしょうが、平易に言うなら《Do we understand each other?:ドゥ ウィ アンダスタンド イーチ アザー?》とも言えるでしょう。これを日本語に訳すと『私達は、お互いに理解し合えている?』という意味になります。

3.お互いに《理解》するってどういうこと?

さて、ここにAさんとBさんがいた場合、2人が《お互いに理解する》とは、どういうことでしょうか。それは、AさんがBさんのことを知り尽くし、同時にBさんもAさんのことを知り尽くして、しかもその《認識》が的外れではないという意味なのでしょうか。
それは《あり得ない》でしょう。私たちは、自分の内面さえ理解できないことがあるのに、他者のことなど深く知る由もありません。ここでの《理解》は、少し意味が違うのです。

4.コミュニケーションが成立したと言える時

たとえば、Aさんは自分自身が空腹なだけではなく、Bさんも今、空腹であることを知っているとします。Bさんも、2人とも空腹であることと認識しています。それなのに、Aさんは一向にBさんを食事の話を持ち出しません。なぜなのでしょうか。
そんなBさんの不審な思いにAさんが気付いて、『いやあ、私、野菜しか食べないから外食は苦手で…』と弁明します。そこでAさんの事情を理解したBさんが、『じゃあ、うちにおいでよ。昨日、市場で新鮮な野菜をたくさん買って来たんだ』とオファーします。
Aさんが、そのオファーを快諾して、2人のコミュニケーションが成立します。もちろん、それぞれが自分の家に帰って食事をすると《相互に了解》する時も、コミュニケーションは成立です。

5.協働できることを探し出してオファーする

つまり、コミュニケーションとは、お互いがお互いを知るという漠然としたものなのではなく、相手の状況を知って《一緒にできることを探す》時に生まれるものだと言えそうです。日本語の《意思疎通》は、互いが空腹であることを知ることに留まらず、《お互いの空腹を解消するために何ができるかを考えて、行為ののオファーを出すこと》だと言えるのです。
全てが分かり合える必要はなく、《今の状況》と《協働できる行為》に集中して、《オファーと了承》を交換し合うことが、コミュニケーションであり相互理解であり、意思疎通だということです。

6.そんな面倒な話が営業の役に立つのか…?

『そんな風に考えるのは面倒』かも知れません。しかし、一度もこんな風に考えず、ただスローガンのように《顧客や見込み先とのコミュニケーションを深めよう》としても、実際、無駄なことばかりを繰り返してしまうことが多そうなのです。
たとえば、親しくなることがコミュニケーションの本筋だと漠然と捉えてしまうと、『仲良くなったのに、保険の話を切り出せない』という状態に陥るかも知れません。あるいは顧客に《保険の有用性》を分からせることがコミュニケーションだと捉えてしまうと、一方的な話に終始し、顧客は引いてしまうかも知れないのです。

7.言葉の意味の深い理解は《行動》を変える

ところがコミュニケーションは、お互いに《協働できる行為》を探すために、お互いの《今の事情》を知り合うことだと捉えるなら、営業者の活動も顧客や見込み先の応答も変わって来るでしょう。
見込み先は、保険を営業者のペースで売り込まれるのが嫌なのかも知れません。そうでなくとも、生命保険営業者は『史上(市場?)最強のセールスマンだ』と、不動産営業者や証券マンにも噂されています。
そこで、まずは、そんな見込み先の《事情や心情》に配慮して、協働可能なオファーを出す必要が出るのです。その協働行為の営業者サイドからのオファーは、たとえば『私が考える保険活用法が、あなたのお役に立つかどうか、15分間だけ、保険の話を聞いてくれませんか』というものかも知れません。

8.最初の協働とその《発展先》に見える成果

話を聞くかどうかは顧客の選択です。しかし、見込み先が本当に『保険は不要だ』と考えてはいないなら、『話を聞くだけですよ』等という念押しはあっても、15分の時間はくれる可能性も出て来ます。
その15分間に、コミュニケーションを深める技術を駆使するなら、1つの協働から《次の協働》の方向性が見つかり、その小さな協働の蓄積によって、相互理解が深まる可能性が広がるはずなのです。
生命保険を否定しないけれども、契約に向かうハードルが高い顧客層は、決して少なくないはずです。そして、まずはそんな顧客層と《生命保険の話を始める環境》を作ることが、営業コミュニケーションあるいはビジネス・コミュニケーションの始まりだと言えるのです。

9.強い《方向性認識》が成果に至る最短の道

保険の話を前面に押し出す《営業コミュニケーション》でも、相互理解に至るには、顧客層に保険の有用性を理解してもらうのみならず、営業者サイドの《顧客層への事情の理解》が必要になるのは当然です。
しかし《顧客層への理解》も、むしろ『この人を保険から遠ざけているものは何なのか』あるいは『この人は、保険に対してどんな誤解をしているか』というピンポイントなもので十分でしょう。顧客の経済力や家族や会社でのポジション等は、顧客自身の《問題》であり、保険契約は顧客自身の《決定》だからです。
言葉の意味から発想を重ねることも、時には役立つものなのかも知れません。

上記8.に記された《コミュニケーションを深める技術》は、以下の講座で《4大ポイント》として、具体的に解説されています。ぜひ、こちらから、その概要ご参照ください。

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