顧客の抵抗感や迷いが大幅に低下する事例話法の効用

生命保険や医療保険は、靴やカバンのように、買って(契約して)直ぐに役立つ実感を持てるものではありません。そのため契約すべきかどうかの迷いが大きくなるのみならず、検討自体にも抵抗感を抱いたりしてしまやすいのでしょう。
ただ、そんな《営業への逆風》状態を吹き飛ばす《話法》が存在することを、忘れるべきではありません。

(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)

1.生命保険や医療保険等の営業の特殊性!

契約してもすぐに手に入らないのは、マイホームも同じです。人気商品なら、自動車や家具にも《長い納期》があるかも知れません。しかし、保険には《契約上の出来事》が起こらなければ、《商品の存在》自体を実感できないばかりではなく、保険料の全部または一部が掛け捨てになるという《買い手のリスク》も伴うのです。
終身保険や超長期保険を《変額型》で契約しても、返戻金が保険料累計額を超えるまでには、時間が掛かります。

2.保険の有用性の理屈には説得力がない?

『否、保険は《メリット》ではなく《安心》や《人間関係を良好にする手段》を買うのだ』と熱弁を振るっても、買い手は簡単には納得できないかも知れません。安心も良好感も、あいまいで不確かなものに見えるからです。
しかも、《人生100年時代=なかなか死なない》と言われ、大病にも《公的な健康保険》が医療費をカバーしてくれる今日では、保険金の威力でさえも、なかなかイメージしにくいものに留まりそうなのです。
今や、生命保険や医療保険の《必要性》に目をつむることは、かなり容易なのです。

3.話が拒絶されると関係修復は難しくなる

そんな状況下で、《保険の有用性や価値》を説いても、医療保険なら『貯蓄すれば済むこと』と言われ、生命保険では『そんな資金があったら、投資に回した方が得策』とされるかも知れません。
そして、いったん《そんな風に思い込んだ》顧客には、《保険の有用性の正論》つまり《先行きは見通せない》という理屈は、もはや通用しにくいのです。下手をすれば、話すら聞いてくれないでしょう。
しかし、たとえば《こんな話》ならどうでしょう。

4.現実の中で《起こり得る》事件の多様性

42歳の夫の父親(71歳)が病気で他界しました。急遽葬儀のために里帰りした夫は、母親(68歳)の中に焦燥と不安を感じ取ります。そして、葬儀を終えた帰り道で、自分の妻(41歳)が『お母さんは、何歳まで一人なのかしら?』と聞いて来たのです。
もし、平均余命通りなら89~90歳まで21年以上生きることになります。場合によっては30年近く生きるかも知れません。『長寿化時代って、残された側にとっては酷よね』と、妻はため息をつきました。義母を将来の自分に重ねているのでしょうか。

5.長寿化時代だからこそ生命保険が必須?

夫は、『長寿化が残された側には大変だ』とは、それまで考えてもみませんでした。《長生きする》という言葉の中で、『確かに(死を)考えなくなったなあ』と痛感するのです。妻は『お母さんには、お父さんの遺族年金か、自分の年金があるけれど、お父さんがもっと若い時に亡くなっていたら、どうなっていただろう』とも言い出します。
そして『考えちゃうなあ』という言葉を最後に、黙りこくってしまったのです。夫も『お前が先(に死ん)でも困るんだよな』と言ってはみたものの、その後の話題を見つけられません。

6.事例の後半は紹介したい保険の話だが…

この事例の続きは、夫が死亡保障と老後保障の二刀流契約のために終身保険に入ったのでも、先進医療特約がついた医療保険を契約したのでも、夫婦が互いを受取人とした超長期の生命保険を契約したのでも、何でもよい…、と言うより選択肢は多様でしょう。
更に保険契約の後、たとえば定期的な健康診断を欠かさないようにしたとか、食べ過ぎ飲み過ぎに注意するようになったとか、夫婦が体操やウォーキングを始めるようになり生活習慣が変わった等という、《保険契約意識=将来リスク対策意識》が、保険を契約しただけに留まらず、日常にも変化をもたらした話が続けば、だんだん《保険契約で得られるもの》のイメージが膨らんで行くはずなのです。

7.事例なら否定されても関係は壊れにくい

『いやあ、そんなの私には関係ない』と否定的な人にも、『これはあくまで事例ですから、ご参考のためにお話ししました』と言えば、対話関係を崩す心配もないでしょう。更に『生命保険の営業をしていると、色々な体験がありまして、今度は保険とは関係のないお話を持って来ますね』という姿勢をとれば、次の機会も確保できそうです。
次の機会に《保険と関係が薄い》話、たとえば晩年になって山登りが趣味になったAさんから聞いた《山に惹かれた経緯》の話をしたとしても、遭難して民間の救助隊に捜索された話を加えるなら、保険の話の糸口も作れそうです。もちろん、相続対策の話にも繋ぎ得るでしょう。
人生は、どんなシチュエーションでも必ず、それ相応の《危険》が待ち受けているからです。

8.求められるのは自分自身で再現可能な話

お客様の噂話をペラペラしゃべるのは、それを好む人はいても、品格を欠くでしょう。品格を欠くと、結局は信頼関係を築けません。しかし、噂話ではなく《当事者が特定できない》事例なら、誰もが聞いておくべき《見識話》になる可能性が高いのです。しかも、人の人生や事業に関わる保険営業の中で得られる《事例》なら、興味を抱く人も少なくないでしょう。
その一方で『こんな保険をこんなタイミングで契約すべきだ』と言いたい時に、『Bという人は、こんなタイミングでこんな保険を契約しました』という《たとえ話》で語る習慣を身に付けるなら、聞き手(顧客)は、その話には他人事になれる分、契約内容を客観的に捉えやすくなるはずなのです。それも《事例の効果》の1つです。

9.体験や見聞等を《事例》として語る意味

自らの体験や見聞を、そのまま話すのではなく、《事例》として語る技術や習慣が身に付くなら、保険営業者の皆様が持つ《有益な話》が、どんどん《世間》に広まりそうです。
もちろん、事例にはリアリティーがなければなりませんが、新聞記事のように《事実だけを伝える》ものにする必要もありません。事例は顧客が《考える》際のヒント、つまりは《たとえ話》であり《報道》ではないからです。

10.顧客が自分で《判断》できる材料の提供

保険の効用や必要性を、様々な《騒音や雑音》の中で伝えにくくなった昨今、事例で語る技術や習慣は、今後更に重要な営業トーク技術になって行きそうです。
保険契約の是非を判断するのは顧客自身ですが、《保険の効用をイメージできる情報》が顧客に届いていないなら、それは保険営業にとってのみならず、顧客にとっても不幸なはずです。《自分が必要性をイメージできる情報》が得られないと、保険契約をするにせよ、しないにせよ《自分にとって適正な判断をしたかどうかは分からない》からです。

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