不安の“素”を追って見つけた 手つかずの生命保険市場

新日本保険新聞生保版連載記事(2025年11月)

(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)

女性の保険営業者であるAさんは、人生マネジメント視点から《生命保険》に繋ぐ提案ストーリー作りに着手した。ストーリーの材料となる事例には、親戚筋の事例ばかりではなく、Aさん自身の体験や思いも含まれていた。

マネジメントの本姿を起点として…

 本シリーズ第7回で、Aさんが『マネジメントの神髄は、先行きの予測よりも先々の原因作りにある』と捉えたとご紹介した。しかも先行きは想定の範囲を超えるものだから、状況次第で『既存の原因を部分的に変容させる意欲』が必要になる。その“新たな原因作り”と“既にある原因の変容活動”こそがマネジメントの本姿なのだ。  そして『実現したいものの原因作りが本来のマネジメント(本マネ)なら、実現阻害要因への対処原因を作るのがリスクマネジメント(リスマネ)だ』とも考えた。

マネジメントを必要としている主体

 ただ、そんな大層なものを、経営者以外“誰”が必要としているのだろう。そんな時、ふと“やや不謹慎な思い”が湧き上がる。Aさんは夫を早く亡くしている。しかし夫が残した死亡保険金のおかげで、昔なら“未亡人”と呼ばれた第2の人生を、それなりに充実させているとも言えるのだ。
 それはAさんにとって『考えてもみなかった生き様』だった。しかし、夫の生死に関係なく、自分としての“新たな生き方”を望む女性がいたらどうだろう。

親戚の友人にあたるEさんの例では

 親戚の友人にあたる女性(Eさん)は、若い頃、雑誌社の“校閲=文章や画像の内容検証と校正”の仕事をしていたが、結婚後は主婦業に専念していた。2人目の子供が高校生になったのを機にパート勤めを始めたが、ふと“自分の先行き”に空虚さを感じ始める。『このまま老いて、私はどうなるのだろう』と。
 過去の経験と実績を生かし、ネット記事の校閲業務に取り組んでも良い。しかし、もっと工夫出来ないものか。Aさんは、自宅で出来る独立事業を“夢”見ていた。

先読みが未了のケースでの保険契約

 そんな折、保険営業者と出会い、自分を被保険者とした終身保険を契約する。それはもちろん、家事ができない夫が一人で老後を迎えることを懸念したからだが、もう1つ理由があった。営業者から『解約返戻金は契約者が受け取る』と聞いたからだ。
 それなら、自分が他界した後の夫の老後資金のみならず、自分自身あるいは夫婦の“第2の人生”のための“まとまった資金”が得られることになる。

その時が来て役立った生命保険契約

 契約時に詳しく考えていたわけではなかったが、事業を始められない原因としての“資金不足”回避を、心のどこかで考えていたのかも知れない。それから十数年が経ち、夫は勤務先に継続雇用され、意欲が持てない仕事を続けている。
 Eさんは思い切って“生命保険の解約”を夫に持ち掛けた。夫は最初“離婚話か”と感じたようだが、解約返戻金の使い途は“在宅フリーランス業”の創業資金だった。

一気に進んだ《自分事業》環境作り

 まず、パソコンを買い替え、最大速度のインターネット契約を結んだ。そして、知人にホームページ作成を依頼する。もちろんスマホでも見られるだけではなく、ホームページからのダウンロードや“カード支払い”もできるようにした。
 Eさんは、受け取った原稿やWeb上の文書の校閲の結果と“どこをどう直すべきか”という指示を、文書と画像でダウンロードしてもらう形にしたかったわけだ。

販売体制確立に加えて《営業》も…

 校閲結果のダウンロードの際には、通販サイトのようにカード決済をしてもらう。この後払い的な体制と取りはぐれのない仕組みが、可能性を開くと考えたわけだ。
 同時に《ホームページ制作》の講習を受け、ホームページのリニューアルを自在にできるようになって行く。今やEさんの仕事の営業は、夫が副業として引き受けている。社内結婚だった夫は、出版業界にも顔が利く。

更に《生成AI》活用までイメージ

 その後、その夫のアイデアで、顧客のホームページのコンテンツを“生成AI”に作り直させ、そのAIの“作品”に入念な校閲を加えて提供するという事業展開の可能性まで見つけ出せそうになって来ている。
 Eさんは、あの時、先々がよく見えないまま“軍資金作り”を行ったことに、ある種の“直感力”的な奇跡を感じているようだ。しかし、それは奇跡と言うより、内容が何であれ、“新たな活動を起こせる資金”という“原因”を作った“成果”だろう。

確かに特殊な事例だが《根》は普遍

 Eさんのケースは特殊かも知れない。しかし、周りを見渡すと『このまま人生を終わって良いものだろうか』と感じている“子育て晩年”期の女性は、少なくなさそうだ。それは単なる“不安”に留まる場合もあるが、そこに準備行為と、その結果としての資金入手見込みが加わるなら、不安すら“意欲的な意識”に変容し始める。
 そもそも、私たちが不安を感じるのは、そのテーマに関して既に“潜在的な意欲”を持っているからだろう。意欲がないなら不安も生じようがないはずだからだ。

ある種の《大義》と目に見える実利

 しかも、“夫を死亡保険金の受取人にする”という“ある種の大義”と、家計一般とは区切りを付けやすい“解約返戻金を自分が受け取る”という構造は、たとえば《家の基礎土台》のように、活動土台を形成してくれそうだ。
 もちろん『人生、このままでは終われない』という思いがない人には通じない話だろう。しかし、自分の人生の先行きに、全く関心を持っていないように見える主婦層に対しても、事例提供で“眠った意欲”を揺り起こせるかも知れない。

不安の裏にある潜在的な意欲を刺激

 その際、こっそり自分の資金を貯める方法ではなく、《夫に死亡保障を提供》する形なら、話を先に進めやすいはずだ。保険営業者のAさんが集め始めた《事例》は、様々な保険トークの材料になりそうだ。しかし、事例をトークにすることなどできるのだろうか。Aさんは“仮”のトークを作り始めた。その詳細は、次回にご紹介する。

Information

人生マネジメントに強い関心を示す顧客層はどんな人達なのかと考え始めた時の《意外な結論》が、女性市場の新たな開拓への道筋になった。

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