やや《戦略的》に捉えた生命保険の活用ストーリー

(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)

なかなか、生命保険の話で、顧客の興味喚起ができない中で、保険提案に至るために必要な道筋作りと、それを実現に導く《保険以外の話題》の役割とは、いったいどのようなものなのでしょうか。そして、今なぜそんな話題が必要なのでしょうか。
『保険を語るには、保険以外の話題から入れ』と言われる現代事情に、少し踏み込んでみましょう。

1.確かに生命保険の話に《興味》を示す人が減った!

『今や、保険の話に興味を示す人が、本当に少なくなった』と言われることがあります。そして、『保険以外の話題で、人をキャッチする必要がある』とされるのです。
その発想は、今や《当たり前》とも言われますが、同時に『話ができる関係は作れたが、やっぱり保険の話題が出せない』という壁を越えるには、やはり《更なる視点》を加える必要がありそうなのです。

2.夢や目的のためではなく、不安だからお金を貯める

たとえば《お金を貯める》という行動を例にしてみましょう。以前には、『お金が貯まったら世界旅行をしよう。特に北欧でオーロラを見たい』などという類の《素朴な目的》があり得ました。頭金を貯めて《マイホーム》をという夢も、自然なものだったと思います。
しかし、今では《何かのために》ではなく『不安だから貯蓄をする』というケースの方が多いのではないでしょうか。もっと正確には、不安だから、みだりにお金を使わず、その結果、お金が貯まるわけです。

3.現代を取り巻く《将来の不安》はあまりにも多い!

その不安の素は、自分や家族の老後であり、あっけなくやって来る大病であり、いつ起こるか分からない巨大な災害であり、気象変動による食料資源の枯渇であり、勤め先の倒産であり、国家財政の破綻なのです。
つまり、私たちの生活実感が《将来に実現するのは夢ではなくリスクだ》という感覚の中で、将来不安に備える形に、毎年どんどんとシフトしているということなのです。
そんな現代人に『将来に備えましょう』という、保険の話題に改めて乗る気がしないのは当然かも知れません。顧客は既に《リスク対策モード》に入っているからです。

4.現状の暮らしや事業で本当に満足すべきだろうか?

しかし、《人生》このままで良いのでしょうか。《事業》は、そこそこ活かすだけで良いのでしょうか。もっと《やりたいこと》や《できること》に熱中しなくて後悔しないのでしょうか。
やや意外に感じるかも知れませんが、生命保険を語る前に、人生や事業を語らなければ話が先に進まないのが、現代の《空気》とも言えそうなのです。

5.貯蓄や金融資産に生命保険の役割を代行させない!

では、生命保険は《役割》を変えるのでしょうか。否、《役割》を変えるべきは《貯蓄》あるいは《金融資産》の方でしょう。やや軽薄な言い方になりますが、『貯めたお金は有効に使いましょう。先行き不安対応は、生命保険に任せましょう』というスタンスが、トークの《どこか》で必要になるということです。
そして、そんな感覚を深い部分で発信する話法には、大きく分けて2通りあると言えそうなのです。

6.もっと夢や期待を持って生きても良いのではないか

その第1は《夢実現の語り部》になることです。それも『こうあるべきですよ』と語るのではなく、『視点を変えた投資で、こんなに快適に暮らす方法がある』等と事例や例話を提供することです。たとえば、太陽光パネルをたくさん付けられる頑丈な家に住んで、オール電化+全館空調+電気自動車で暮らすAさんが、日々どんな暮らしをしているかを紹介するわけです。
それが、同時に二酸化炭素排出抑制にも、地震等の災害にも、老朽化にも強い家なら、気分が少し変わり得るでしょう。リスクにばかり目を向けず、快適にお金を使う…、そうすれば、不安が“適度”化することで、リスク対策としての保険の存在感が際立つ可能性があるわけです。

7.お金があっても協力者がいなければ先行きは暗たん

語り部のもう1つの道は、《人と人の協力関係の語り部》です。たとえば、今や、人の平均余命は壮年期に建てたマイホームをはるかに超えるようになりました。その結果、老後には、老朽化した家を何とかしなければならないという《労苦》が待ち受けているのです。しかも、高齢になると動く気さえしません。
そんな時、子供や親戚との共同出資による共同生活は考えられないでしょうか。二世帯が住める大きな家を、後継者と共同で建てるのです。そうすれば、老夫婦は最新鋭の家に住み替えられて、一定の距離が保たれた共同生活の安心感を手に出来ます。一方、後継者である子供夫婦には、少ない負担で大きな財産が手に入ります。親戚等であっても相続が可能なら、財産は全部自分達のものになるのです。

8.やや戦略的に捉える《生命保険》の活用法とは…?

更に《その時》のために、終身生命保険を若い内から契約しておけば、その契約を持ち続けることで、介護が必要になった時の《子供世代の経済的な負担軽減》策になり得ます。求めるのが死亡保険金か解約返戻金かは、子供世代次第でしょう。
二世帯住宅等を建てる資金に困るような時は、終身保険契約者自身が解約返戻金を住宅資金に充てることもできます。介護の不安があるなら、その後に介護保険を充実させてもよいでしょう。

9.保険の提案に行き着く《活きいき対話》ストーリー

保険営業ですから、結局は《保険の話》をするのですが、その前に《先行きの心配の種を減らす話》《したいことを実現する時の心の豊かさの話》等で、生命保険の周りにこびりついた《数々の過剰不安》を払い落とす必要がある…、と言うと、やや大げさでしょうか。
しかし、将来のリスク対策のために今を犠牲にするのが、半ば当たり前になった現代人には、ストレートな保険の話ではなく、保険に行き着く心の余裕を作り出す《活きいき対話ストーリー》が不可欠になると言えそうなのです。

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