ビジネスは日々、身体ばかりではなく精神をも消耗させるものです。その中でも保険営業は、特に消耗度が大きい活動だとも言えるでしょう。必ずしも《顧客が欲しがる》ものを売っているわけではないからです。
では、そんな営業活動の中で、心を軽くする方法はあるのでしょうか。ご一緒に考えてみましょう。

1.達成感こそが至上の喜びだとするなら…

『達成感(目的を果たした時の気分)ほど、大きな喜びはない』という人がいます。確かにそうかも知れません。事を達成した時の喜びや満足は、どこか心の底から響いて来るような勢いに満ちているからです。
ただ、この《喜び》は、契約を獲得した時にしか得られないのでしょうか。もちろん、最大の《満足》は契約獲得時に訪れるものではありますが、《小さな満足》なら、様々な形で存在します。しかも、契約に至る《道筋》に《一列に並ぶ》形で現れて来るのです。

2.契約に至る道筋に《一列に並ぶ》もの?

その《一列に並ぶ》ものとは、順番に挙げるなら、《①見込先開拓》、《②アプローチ》、《③提案と契約》、《④交流の継続》、《⑤多種目販売》の5つです。もちろん《③提案と契約》あるいは《多種目販売》は、営業の目的そのものですが、他の3つにも《ゴール》を定めた活動が可能であるはずです。
しかも、長い道のりも《少しずつ》刻みながら進むと、想像以上に《足が前に出る》ものでもあるでしょう。たとえば、競技場のトラックを回る中距離走なら『あと何周もある』と捉えず、『1周回った、もう1周、更に1周…』と、達成できた気分を積み上げて行く方が、心が軽くなり得るだろうからです。

3.各ステップの成功イメージと実行プラン

さて、まず《①見込先開拓》に際し、『契約可能な先を探し出せているか』と考えてしまうと、暗たんたる気分に陥ることがあるでしょう。契約というゴールまでの道のりの遠さばかりを感じてしまうからです。
そこで一旦《遠い先》への視線を外し、『さて、見込先になるべき人に、何を気付かせてみようか』と、見込先開拓に集中した《ゴール》を設定してみます。それも保険の有用性とか、一気に先に飛ばず、たとえば『自分が家族から大事にされないのは、家族を大事にしていないからではないか』という現実に気付かせてやろうなどと《企んで》みるわけです。

4.思いが伝わりやすい話題作りから開始!

もちろん、説教や示唆のような《上から目線》では、見込先候補には《思い》が伝わりません。そこで『そうだ、他者事例を語って共感するかどうか試してみよう』という実践方法をとってみるのです。
保険を売らなければならないという緊張感から少し離れ、《家族関係》の事例を話すことに徹します。家族同士でも、結局は《お互い様だ》と思える事例を語ってみるのです。
たとえば、親が子供達に向かって、『お前達が私達の介護等で、将来、自分の仕事を犠牲にしなくて済むように、今から老後の準備をする』と話しながら、『だから、(節約に協力して)少し資金捻出を手伝ってくれないか』と語り掛けるような話です。
その話に『なる程』と言う人を見つけること、あるいはそう言わない人にも『なる程』と言わせる話を見つけ出すことを《見込先開拓のゴール》と位置付けるのです。

5.保険の話題を出しやすい関係を作る工夫

もちろん、それは保険の契約には直結しないかも知れません。しかし《話ができる環境》は作れるはずです。しかも、家族の話なのですから、たとえば桜や雪を語って親しくなる時よりも、ずっと保険の話を出しやすい関係になるはずなのです。
ただし、保険の話に至る《②アプローチ》にも、それなりの《ゴール》すなわち《達成したと言えるイメージ》が必要でしょう。5つの活動それぞれに、一里塚のような成果目安を付けるということです。

6.最終成果を意識する営業者は怖くなる?

契約を意識しながら見込先を探すと、どうしても《相手の値踏み》をしてしまいます。そんなつもりは毛頭ない…、と思っていても、その《値踏み目線》や《査定的な態度》は、人間ですから出てしまうのです。皆様方も《心に一物ある人》を、直ぐに見抜いてしまうのではないでしょうか。
そして、値踏み目線を受けた見込先候補は、『まあ話は面白いけれど、保険の話題が出たら即答で拒否しよう』と、心に誓ってしまうかも知れません。《値踏み》は、それほど相手を傷付ける姿勢だと捉えるべき姿でしょう。

7.一里塚発想がもたらすものは案外大きい

そこで先を急がず、余裕のある目と、相手と一緒に新たな気付きを楽しむ心を持って、一里塚ゴールを1つずつ試して行くわけです。すると、話ができる先が意外に多いことに気付き始めるはずです。今まで《私》は、見込先候補には、ちょっと怖い存在に映っていたのかも知れません。
そして《①見込先開拓》、《②アプローチ》、《③提案と契約》、《④交流の継続》、《⑤多種目販売》それぞれに、一里塚ゴールを作るだけではなく、それぞれの《一里》を契約から多種目販売へ繋いで行く道筋を作ろうとするなら、やや語弊はあっても、楽しみながら営業に取り組む方法論が、見えて来るとも申し上げられるのです。
ただ、その具体的方法や話の内容は、ここでは語り尽くせませんので、別の機会に譲りたいと思います。

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