ここでは、法人経営者へのアプローチ法を、ご一緒に考えて行きます。もちろん、その目的は生命保険提案ですので、保険の話を《切り出しやすい》関係形成法を取り上げて行くことになります。

1.2つの法的人格を持つ《法人経営者》

法人経営者とは、一般企業の経営者や、医業や士業の資格を持って自事務所を法人化している専門機関等の所長等を指します。自分自身の《私人格》と法人の代表者という《法的人格》の2つを持つ人です。
そして、法人の代表者としての経営者には、大きく分けて《3つのタイプ》が存在します。そこでまずは、その《3つのタイプ》の整理から始めましょう。

2.法人経営者の《3つのタイプ》とは?

3つのタイプの第1は、代々受け継いだ法人を世代を超えて継続させる《長期存続型法人》の経営者です。このタイプは《典型的な経営者》と呼べるかも知れません。
第2のタイプは、単に事業実践上の諸事情のために法人格を取得したような経営者で、事業承継等の意図はほとんどありません。つまり《生涯現役経営者》です。
第3のタイプは、代表権は持っていても、まだ先代が役員等として残っている法人の後継者であったり、代表権や自社株を持ちながらも筆頭株主ではなかったりする《二番手的経営者》です。

3.この3者に共通していた財産保有意識

第3の《二番手的経営者》の意識には、やや制限が加わりますが、法人のオーナーが経営者自身であることが多い第1と第2のタイプの経営者は、従来『所有法人と自分個人は財布が違うだけで、両者とも自分のもの』と捉える傾向がありました。
ところが、個人財産は分かりやすいものの、法人財産の《個人所有部分》は、経営者が保有する《自社株》の評価額で決まるため、多少の精査が必要です。数値としては、企業の貸借対照表の《純資産》が概ね、株主たる経営者の個人資産に相当します。株主が複数存在する場合は、その持ち株比率で個人資産を推定できます。

4.全てのタイプの経営者を襲う現代変化

確かに、2つの財布を持つという感覚は、まだ多くのオーナー経営者に残っていますが、現代社会は容赦なく、その《緩い?意識》に間接的なメスを入れ始めました。
その結果、新たな社会常識となりつつあるのが、《働き方改革》やそれ以前の《社内の労使間トラブルの多発》に見られるような《従業員の意識変化》です。
経営者が『会社の財産は自分のものだ』と捉える一方で、昨今の従業員は『会社の財産形成には自分たちも関わった。だから会社の財産は経営者が独占できるものではない』と考えるようになり、実際、そんな主張を始めたということです。

5.経営者だけのための退職金準備では…

その社会意識の変化は、《働き方改革》の中に表現され始めましたが、その詳細は別の機会に譲るとしても、1つ典型的な事例があります。
従来、法人が契約者となり経営者が被保険者となって、たとえば終身保険を契約する形が人気を集めたことがありました。法人契約ですから、死亡保険金も解約返戻金も法人が受け取ります。
そして、法人から経営者が生存退職金を得たり、経営者の遺族が死亡退職金を受けとったりして、法人に支払われた保険金や解約返戻金を、そのまま経営者やその家族に渡る形を作れたのです。

6.異なる角度から事態を捉える発想転換

ところが、従業員意識の変化に伴い『皆が稼いだ財産を、経営者のためだけに使うのはおかしい』という目が、法人内で見受けられるようになりました。その目がまだはっきりとしていない場合でも、経営者に《気にさせる》には十分なレベルにあるケースが増えています。
そのため、今《生存退職金と死亡退職金の両方の原資になり得る生命保険を法人が契約する》という形の保険提案が、通りにくくなったのです。保険営業での法人開拓は、一気に難しくなりました。
そんな事情から、今事態を少し違う角度から捉える《発想転換》が必要になっています。

7.経営者アプローチで重要になった視点

その発想転換とは、もはや『経営者個人の財布と法人の財布は別物になった』という意識の中で《経営者自身が出資者としての利得が失われるリスクの只中に放り出され始めた》という現実を皆様方が直視すること、あるいは経営者にそれを直視させることです。
そして、従来と同じ生命保険でも、経営者自身の退職金として活用するのではなく、利得喪失リスクの回避や軽減のために保険機能を活用しようとする考え方を勧めるわけです。
もちろん、上記《3つの経営者タイプ》で、それぞれそのリスクの規模や性質は異なるのですが、経営者に新たなリスクを実感させながら、何より《保険営業者の皆様に対する見方を変えさせる》ことが、今日、法人アプローチのスタートとして、非常に重要になって来ていると言えそうなのです。
その詳細は、このコーナーでご一緒に深めて参りますが、まずはこちらをご覧ください。